d 視覚障害者と就業

原著

井上晴豪、守山正樹.視覚が障害された理療師の診療行動; 医療参加のインクルージョンを探る事例研究.民族衛生、71(5): 191-206.2005

Inoue Seigou, Moriyama Masaki. Case study of blind physiotherapists; characteristics of their therapeutic behavior and therapist-client relationships.  The Japanese Journal of Health and Human Ecology, 71(5): 191-206. 2005

キーワード=>視覚障害、理療師、インクルージョン、コミュニケーション、診断・治療行動   visual disturbance, physiotherapist, inclusion, communication, diagnostic & therapeutic behavior

 

視覚が障害された理療師の診療行動;

医療参加のインクルージョンを探る事例研究

井上晴豪、守山正樹 

    和文抄録=> 医師・歯科医師国家試験の受験に際して、“障害者に係る欠格条項”が削除されたことにより、障害者が医療者として、単に代替医療に留まらず、メインストリームの医療に関われる時代になった。しかし、障害者が関わる医療とはどのようなものか、明らかにされていない。本研究では、我が国で障害者が代替的・補完的に医療に関わることが認められてきた東洋医学系物理療法の分野を取り上げ、医療者-患者関係に焦点を当てて、事例研究の手法で、彼らが行っている医療の概略/特徴の解明を試みた。 調査対象は、福岡県に在住の視覚が障害された理療師(あん摩マッサージ指圧師&はり師&きゅう師)12名である。面接聞き取り調査から得られた対象者の発言記録を分析し、理療診療行動につき6分野22主題87項目の特徴を抽出した。87項目中、43項目に関しては、12名の対象者全員に共通した特徴だと判断された。これらの結果から、診断から治療に至る場面での様々な課題遂行時に、手指感覚・触覚と言葉が高度に活用されている事実が示された。理療師と患者が出会った直後から開始されるマッサージは、治療技法としてだけではなく、触診としても機能していた。マッサージと平行して、医療面接としての対話を行い、同時に腹診や脈診も進める対話的・融合的な診察形態が見出された。対話的・融合的診療の特徴は、診療過程の後半における診断と治療においても明らかで、手指感覚と言葉は相補的に組み合わされ、課題遂行を担っていた。

 

Ⅰ 緒 言

 障害を持つ人も障害を持たない人も、共にその存在が大切にされる社会の実現は、我が国でも社会通念となりつつある。このような考え方の一つの出発点は、「障害者を受け入れ、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルな社会である」というデンマークのNirjeが提案したノーマライゼーションの発想(Sherrill, 2003)であろう。しかし、「(障害者を)受け入れる/(障害者が)普通の生活が送れるような条件を整える」という発想は、「誰がそれをするのか」と考えたとき、ともすると健常者の視点が中心となる危険性を持っている。そのため、視点そのものを健常者/障害者と区別せず、「障害を持つ人も持たない人も、共に社会を構成し、互いに、それぞれの個性を尊重する」とするインクルージョンの発想(Young, 2000)が、ノーマライゼーションと共に重視され始めている。しかし社会の様々な場面が、これまでは主に健常者の発想によって動かされてきたことも事実であり、ノーマライゼーションやインクルージョンの発想をどのように具体化してゆくかは、社会のあらゆる分野で、現在問われている課題だと言える。

 このような社会の動きに伴い、医師・歯科医師国家試験の受験に際して、嘗て絶対的欠格事由とされた「目が見えない者」、「耳が聴こえない者」などの障害者に係る欠格条項(岩崎、2000)が、「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律(2001年)」の成立により削除された。しかし、実際に障害者が医療に携わるようになったとき、障害者はその個性を発展させる形で、どのような医療を展開することになるだろうか。どのように診察/診療を行い、どのような医療者-患者関係を構築していくことになるだろうか。また障害者が医療者として医療にかかわり始めるとき、医療はどのように変化してゆくだろうか。これらの点に関し、研究に先立って内外の文献を検索したが、先行研究は見当たらず、障害者が築く医療が、未だ学術的には概念的理解の段階に留まっており、実証的研究は今後に委ねられていることが明らかになった。そこで本研究では、インクルージョンの発想に立ち、事例研究の手法で、障害者が行う医療の実際を探った。

 本研究では、障害者が江戸時代から医療に関わることが認められてきた(加藤、1977a)東洋医学系物理療法に着目し、視覚が障害された「あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、灸師」に焦点を当てて、研究を進めた。医療への関わりが代替的・補完的であったとしても、障害者が医療に関わってきたことは事実であり、そこに今後の正規医療への障害者の関わり方を考える鍵があるのではないか、と考えたからである。本論文では上記三分野を共通して論じる場合には“理療”を、「あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、灸師」の三資格を論じる場合には“理療師”を用いることにする。

 

Ⅱ 方 法

 1.対象者選定と研究方法の概要

 本論文の著者の一人である井上は、晴眼(目が見える)の理療師として、複数の医療機関で就業し、視覚障害を持つ同僚理療師と交流した経験を持つ。本研究に際しては、「視覚障害を持つことは、理療を行う上で不利な状況だと考えられるのに、どのようにしてその不利な状況を乗り越え、理療を行っているか、その実際を知りたい」という著者の問題意識を対象者に伝え、研究への同意を求めた。さらに著者自身が晴眼の理療師であることを対象者に伝え、「理療を共に担う同僚として、視覚障害者の発想に学びたい」と、インクルージョンに関連した著者の立場を補足した上で、研究を開始した。

 「①視覚が障害されている」、「②あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、灸師の三資格を有する」、「②三資格のうち1つ以上の資格をもとに就労・診療した経験がある」という三条件を持つ対象者(事例)を探し出し、出会えた対象者に順次、面接聞き取りを行う方法で研究を進めた。出発点となった事例は、4年間著者と同じ職場で就労し、友人関係にあったA氏である。A氏から紹介された次の対象者からも同様の協力を得ることができ、これを繰り返して対象者の人数を拡大させた。

 各事例への聞き取りから知見を蓄積し、12事例に達した時点で、事例に即した分析を行った本研究の全体的構成は、基本的には事例研究と位置づけられる。未解明の事象の解明を目指す本研究の場合には、仮説検証型の量的研究方法は適用できない。そこで各事例への聞き取りに当たっては、最初から数量化を意図した調査表を用いるのではなく、対象者の実際の発話や行動記録を重視する質的調査方法(佐藤、1992;守山ら、2000)を取り入れ、対話形式による自由な面接聞き取り法(Cohen-Cole, 1991;Cox et al. 1987)を採用した。事例に即したデータ収集および分析の中心部分は質的研究として行ったが、12事例にある程度共通する事項が浮かび上がって来た場合には、その事項が「12例中の何事例に観察されたか」を%表示する量的方法を併用した。

 2.面接調査の導入部分の質問

 研究の準備段階で、自由な面接聞き取り法を試みた結果、すぐに自分の考えを表現し始める対象者もいれば、何を話せばいいのかと、困惑する対象者もいることが分かった。「ありのままを語ってもらう」といっても、「質問の方向性」は明確にする必要がある。そこで、①(質問が)視覚障害者の実態に迫れる、②(質問が)理療行為中の思考・行動に焦点を当てられる、③(質問が)対象者にとって妥当なものである、の三点を重視した。「仕事中(診療上)に何か不自由なこと/苦労なさっている事があれば、どんな些細な事でも良いので、お聞きしたいのですが」と切り出すことから面接を開始した。

 3.実態に接近できる面接方法

 対象者から正確な情報を引き出すに当たっては、面接時の雰囲気や対話の速度にも配慮が必要とされる。そこで対話の主導権を対象者に預けることとした。しかし対象者が主導権を持ったからといって、必ずしも対話が順調に進行するわけではない。対象者の発言を支えることも必要となる。本研究準備段階の検討より発言を支えるために重要なこととして、以下の諸点が経験的に導かれた;①質問は対象者の発言に沿ったものにする、②対象者から十分な発言が得られたと考えられる場合も、直ぐには対話を切り上げない、③対象者の発言に矛盾が現れた場合、矛盾を直ぐに指摘せず、改めて別な角度からその問題に触れる、④対象者の質問には積極的に答える。以上の点に留意して聞き取りを進めた。

 4.面接の実際

 まず各対象者の職場で70分間程度の面接を行い、必要に応じて再面接を追加した。面接は、質問の流れを略記したメモを参照しながら、半構造化面接の形で進めた。質問の順序と概略は以下のとおりである;①視覚障害の受け止め方(どこまで不自由さを感じているか)、②診療の様式(診療時間、補助者など)、③患者への接し方、④診断の過程、⑤治療と効果判定、⑥視覚以外の感覚の活用。“対象者の視覚障害の分類”、“残された視力”、“障害の発症年齢”、“視覚障害を引き起こした元疾患の診断名”など、重要ではあっても質問し難い事項については、対象者がリラックスしたタイミングを見計らって、適宜、質問の流れに付け加えた。

 5.記録と分析の方法

 対話内容は筆記と録音を併用して記録した。対話時の表情、身振り手振り等の行動、室内の環境および場の雰囲気については、面接中のメモを元に、面接後に筆記記録した。録音内容は発言に忠実に文章化した。面接時の沈黙の長さや雰囲気、語調から推測される感情も可能な範囲で文章化し、面接聞き取り時の臨場感再現を試みた。文章化したデータから、理療診療行動の実態に関する項目を抽出してカード化し、KJ法(川喜田、1986)で分類した。KJ法の出発点は、「現場から得られる渾沌とした多様な質的情報を、中心性を持った短い文章として、次々に書き表し、その1文ずつを小カード化すること」である。その後、小カードを繰り返して通覧する、何らかのイメージが生まれたらそのイメージに沿って小カードをグループ化する、などの過程を経て、最終的には元の情報に内在する意味構造が可視化され、文章化される(川喜田、1986)。

 

Ⅲ 結 果

 1.結果の分類と用語

12名の対象者について初回聞き取りを終えた時点で、全発言記録から100項目を越える理療診療過程の特徴が抽出された。この時点では、抽出された特徴の有無につき、必ずしも全対象者(12名)から確認を取れていたわけではない。不足した情報を補うべく、一部の対象者に対しては聞き取りを追加した。その結果、特徴の有無につき、全員からの確認を取ることができた項目数は、最終的に87に達した。これら87項目は、6分野にわたる半構造化面接の問いかけ/質問項目に対応した形で、KJ法により整理/分類され、合計22の主題(Subject)へとまとめられた。結果を分野別の6表(表2~表7)に示す。表中では各主題に対し、Subjectの頭文字Sに数字を加えた表記を用いた。各主題に含まれる項目数は様々で、S1(表2)のように1項目だけの場合から、S20(表7)のように9項目ある場合まで存在した。表中では、項目別に、12名の対象者中で同様な発言が得られた人数(n)と割合(%)を示す。全87項目中、43項目では割合が100%となり、対象者全員に共通の特徴だと判断された。各項目に見出しをつけるに当たっては、1行を超えない範囲で、対象者が述べた言葉を中心に、説明的に記述した。東洋医学的専門用語の使用は最小限とした。対象者が理療診療行為について語るとき、あん摩・マッサージ・指圧に関しては、三つの行為が区別されることなく、まとめて語られ、その際“マッサージ”で代表されることが多かった。そこで本論文中ではマッサージを“あん摩と指圧をも含む言葉”として使用した。

 2.対象者の属性(表1)

 対象者の基本情報を表1に示す。基本統計量は、年齢が「平均値40.0歳、最小値25歳、最大値68歳」、有資格年数が「平均値8.2年、最小値2年、最大値26年」、視覚障害の発症年齢が「平均値11.3歳、最小値0歳、最大値30歳、最頻値0歳」であった。就労形態では、理療院開業が7名、盲学校教員が3名、病院勤務が2名であった。盲学校は臨床施設ではないが、専攻課程には臨床実習室が設置され、3名の教員は実習指導の一環として、患者の診療を行っていた。

 3.視覚障害の受け止め方(表2)

 最初の質問「S1;視覚障害を持っていることで診療上の不自由さを感じるか」への答えは何れの対象者においても、「特に不自由なことは無い」と一致していた。しかし、このような直接的な質問だと、対象者は緊張感を示す場合が多い。そこで、方向性を変えた質問を行うことで気分を和らげ、より実質的な回答を引き出そうと、「S2;不自由なことは無いそうだが、強いて言えばどのようなことが不自由か」と問いかけた。その結果、「鍼の抜き忘れ」、「専門書での学習」、「患者の顔つきや表情」などの項目が表出された。

 直接的な質問に対して、建前を重視した発言が現れる傾向は、診療技能を話題にしたときにも認められ、「S3; もし視力が正常化したとして、臨床技能に変化があるか」に対しては、全員が「臨床技能は何も変わらない」と答えた。さらに続く質問「S4; 臨床技能は変わらないということだが、強いて言えば、どのような変化があるか」に対しては、「書物による学習の容易化」、「診療の迅速化」などの答えが得られた。

 4.診療の様式(表3)

 補助者から業務の援助を受けていたのは7名である。うち2名の病院勤務者(M2, F2)は専属の補助者を付けていなかったが、院内のリハビリテーション室で理療診療に従事する際、理学療法士の同僚から患者の誘導や症状の説明について補助を受けていた。7名中、残り5名は全員が開業者であり、4名(M7,M8, M9,M10)は既婚者であった。これら4名は何れも配偶者を補助者としており、開業と既婚が診療補助者の存在と強く関連することが示唆された。本研究の限りでは、視覚障害の程度は補助者の存在と関連していなかった。

 患者一人あたりの実際の診療時間(S6)は60分とした対象者が最も多く全体の42%(5名)を占めた。一方、20分と短い時間を回答した2名(M2, F2)は何れも病院勤務者であった。短い診療時間の理由として「雇用者側から診療時間について指示、制限を受けていること」が挙げられた。これらの病院勤務者は短い診療時間に対し、「(この時間内では)マッサージしかできない」、「診療内容が決まったものになりやすい」と否定的な意見を述べていた。患者から灸治療の希望があっても、雇用者の指示により、それを行い難い状況が明らかになった。

 患者一人当たりの理想とする診療時間(S7)は60分が67%と最も多くみられた。教職の対象者(M3,M5,F1)は、短時間で終わる診療が最も良いと考えていた。

 マッサージ、はり、及び灸を併用する際の組み合わせを尋ねたところ(S8)、「マッサージを常に最初に行う」との考えは、全員に共通していた。最初のマッサージは治療行動であると同時に、鍼や灸など侵襲が大きい治療行動の前段階として、病態把握行動とも位置付けられていることが明らかになった。

 表には示していないが、「理療を受診する患者の大半が、同時、または事前に医師の診察を受けている」という発言が全員から得られた。一方、「医師の診断名等はあまり参考にせず、自分なりの診療方針を重視する」との発言も5名から得られた。

 理療の治療では、与える刺激の量や時間を経験的に判断した上で、理療師が治療の強弱を適切に決定する事が重要となる。判断時にどのような要因を考慮しているか(S11)を質問した結果、(患者の)体格、年齢、症状と状態、治療の心地よさ、の4項目が全員に共通していた。特に「患者が感じる治療の心地よさ」は、理療師が治療中に患者と対話しながら得られる情報であることが特徴的だった。以上4項目に加え、4名の対象者は性別を挙げ「女性には弱めの治療を行う」と述べた。

 5.患者への接し方(表4)

 問診のタイミングとスタイル(S12)については、「患者は既にマッサージを受ける姿勢でベッドに伏臥位をとるなどして休み、理療師はマッサージを行いながら、主訴や既往歴、現病歴などの質問を交わしてゆく」という流れが全員に共通していた。「医療者と患者が共に椅子に腰掛け、向かい合って問診を進める」という、医師の診察室における一般的なスタイルは存在せず、診察室内には、患者が腰掛けるための椅子は見当らなかった。

 良質な診療に最も必要なこと(S13)については、全員が「患者さんとの会話時間を多く取ること」を挙げた。一部の対象者、特に年配の3名からは「鍼灸師になりきること」という発言が得られた。さらに意味を尋ねたところ「医療人としての自覚が希薄になりやすく、自省を込めてそう思う」との答えが共通して得られた。

 6.診断の過程(表5)

 整形外科系疾患(S14)と内科系疾患(S15)とで、診断過程に異なった特徴が見られた。整形外科的疾患の診断では、患者の主訴が局在する身体箇所をおおまかに把握するまでの過程が重要視され、動作時痛把握(S14-1)の場合は、対象者全員が「問診」と「徒手検査」を挙げていた。理療における徒手検査とは、理療師の指示のもとに、患者が自力で、あるいは理療師が補助する形で、特定の肢位を取り、その際の自覚的・他覚的な所見(痛みや違和感の発生や消失など)の特徴から、病態を判断する検査である。関節可動域把握(S14-2)の場合は、全員が「動作を行う患者に身体に手を触れて把握する」を挙げ、67%が「目で見て把握する」を挙げていた。視覚障害者用の関節可動域角度計については、使用が認められなかった。

 内科系疾患の診断では、患者の全身状態を多角的・包括的に把握する傾向が明らかであり、全員が問診、脈による診察、腹診、内臓体壁反射領域の触診、および経穴部位(内臓の反応が出る)の触診、を挙げていた。

 7.治療と効果判定(表6)

 理療による治療の場合、鍼、灸、マッサージのいずれでも、総刺激量の強弱を調節することが重要である。総刺激量を把握・調節する方法(S16)として、全員が「マッサージで加える圧の触知と調節」、「鍼や灸の数の記憶と調節」、「鍼の刺入深度の触知と調節」、「治療時間の把握・記憶と調節」の4項目を挙げていた。

 治療効果の把握・判定方法(S17)に関連して、全員が第一に「患者に言葉で表現してもらう」を挙げた。「患者の主観的表現を聞きとること」が一般的かつ重要な方法で、これには視覚障害の有無は関係ないと判断された。一方、関節可動域の制限が、治療後にどれくらい改善したかを徒手検査で確認する際は、一般的には視覚を用いる場合が多く、視覚障害の存在はハンディとなり得る。しかし本研究では、全員が徒手検査と同時に患者の身体に触れるなど、工夫して治療効果把握を行っていた。7名の対象者は、患者に痛みの程度を10段階の数値で表現させる手法を用いていた。

 特に火を使う灸治療の選択(S18、S19)につき、対象者は火災の原因となりうることを不安に感じており、能動的には行わない傾向が見られた。盲学校で灸の手技を学んだときに、「一人ではなるべく行わないように」、「“補助者に行ってもらうのが望ましい”と教えられた」、との発言が得られた。

 8.視覚以外の感覚の活用(表7)

 理療時の治療点(経穴)は、治療の拠り所となる重要なものであるが、現象反応点とされており、目で見て直ぐに場所を確定できるというものではない。視覚が障害された理療師は、視覚以外の感覚を最大限に活用して、治療点を探ることが予想された。そこで触覚と手指感覚に重点を置いて、治療点の決定方法を質問した(S20)。主観性が高いと推測される“感覚”について質問したにも関わらず、硬結感、盛り上がり感、筋緊張感、左右差感、ムズムズ感、棘突起間不自然さ感、及びざらつき感の7項目は全員に共通していた。

 治療点は皮膚上の限定された範囲を示す。実際の理療では、治療点の中でも、患者が最も敏感に反応する最圧痛部位を特定することが求められる。この特定(S21)についても、対象者は一致した見解を示し、全員が「手指感覚で探り当て、患者の体の動きで確認」、「“患部付近の圧迫触知~患者の言葉での位置確認”を反復」、「患者に痛む部位を触らせ、患者の手と言葉を指針にする」の3点を回答した。

 はり治療に関連して、刺鍼時に患者が感じる体内放散痛は「響き」や「鍼響」と呼ばれ、この感覚を患者と共有しながら把握することは、治療の円滑な進行にとって極めて重要である。「響き感覚」の把握・共有法(S22)を質問した結果、理療者の手指感覚による把握と、患者の言葉からの把握が、共通して挙げられた。対象者の半数は、呼吸の動揺で把握する場合もあることを指摘した。何れの把握・共有法でも視覚は必要とされなかった。

 

Ⅳ 考 察

 1.視覚障害者の困難な状況

 「あん摩マッサージ指圧、はり、灸」の分野は、視覚障害者が古くから医療に関わって来た歴史(加藤、1977a)がある。それゆえに、これらの理療分野は、視覚障害者に適した側面を持つことが示唆される。しかし日常生活上でさえ、様々な困難を持つ(山田、2002)視覚障害者にとって、職業としての理療が、容易なものであるとは言いがたい。

 理療では、はり治療の鍼や灸治療の艾(もぐさ)のように特有の道具を用いる。視覚が障害されると、道具使用時に利用できる情報も範囲が狭まる。実際、皮内鍼(鍼長5mm程の鍼)や鍼通電機の操作では、理療師の側にある程度の視力が要求される。こうした道具を用いる治療に関して、本研究の対象者は不自由さを感じている事が確認された。火を使う灸治療に積極的でないことも示された。

 理療の根底にある漢方医学の体系も、視覚障害者向きのものであるとは言いがたい。漢方医学には望、聞、問、切の4種の診察法があり(石野、2002)、四診と総称されている。最初の望診は、患者の皮膚、毛髪、舌、爪、眼球などの色択から、患者の身体情報を判断する診察方法である(石野、2002)。視覚障害のために望診が行えないとすれば、病態把握に活用できる情報の範囲が狭まることは否定できない。

 皮内鍼や鍼通電機などの道具を使用する治療技法は、一般的な理療の立場からは補助的な技法と位置付けられており、それらの道具を用いずとも、治療は問題なく行い得る。灸治療に関しては「火と、火に関連する道具を使用する診療技能そのもの」にも問題があると言える。対象者は日常生活における些細な火の取り扱いにも不安を感じていた。まして「患者の皮膚上でもぐさを燃焼させる」という治療技法は、補助者がいたとしても容易には行えないのが現状である。視覚が障害された理療師の能力を問題とするだけでは、状況は改善されない。安全に容易に使用できる方向で道具自体をバリアフリー化することが望まれよう。

 2.視覚障害という特徴を活かした医療

 本研究の対象者は、視覚障害のハンディを自覚しているだけでなく、視覚以外の情報に基づいた積極的な判断と行動のパターンを身につけていることも、明らかになった。視覚以外の情報がどのように活用されているかを、「手指感覚・触覚の活用」と「言葉の活用」の二方向から整理して表8に示す。診断から治療に至る場面での様々な課題遂行時に、手指感覚・触覚が高度に活用されていることが、明らかである。一方、言葉も重要な役割を果たしている。診断時の3課題(S14-1, S14-2, S15)および治療時の3課題(S17, S21, S22)では、手指感覚と言葉は相補的に組み合わされ、課題遂行を担っていた。「患者に触れ患者と話す/患者に聞き患者から教えられる)」という患者参加・対話型の診療スタイルが形成されていることが伺える。

 視覚が障害された理療師が、患者参加・対話型の診療スタイルを採用する際、問診はどのように位置付けられるだろうか。問診は、患者との対面直後から治療開始までの場面に集約される傾向があるにしても、全員が「問診だけの時間を独立してとることはない」と述べていた(S12)。実際、問診は診療過程での様々な課題遂行時に登場し、マッサージ/脈診/腹診と同時進行で行われていた。マッサージは治療技法としてだけでなく、触診としての役割も果たしていた。

 著者の理療師就業経験によれば、対話的・融合的な診療形態は、必ずしも視覚が障害された理療師に特有なものではなく、晴眼の理療師にも見受けられる。しかし視覚が障害された理療師は、晴眼の同僚に比較して、患者との対話と触診から遥かに多くの情報を得ると推測される。中でも表8に示した“治療における最圧痛部位の特定(S21)”と“響き感覚の把握(S22)”は、理療師と患者との共同作業と位置づけられる。このような診療形態は、最初は理療師の側における“視覚からの情報不足”を補うための適応戦略として、生まれたのかもしれない。何れにしても結果として、視覚が障害された理療師は、「患者と協力・協業する診療」、さらに言えば「患者の参加なしには成立し難い診療」を身に付けるに至ったと考えられる。

 3.本研究における患者参加の位置づけ

 本研究で明らかになった「患者と協力・協業する診療」は、患者参加に関連した世界的動向の、どの辺りに位置づけられるだろうか。

 医師患者関係については、いわゆるインフォームド・コンセントから協業的意思決定(治療方針の選択)に至るまでの領域で、多くの研究が積み重ねられている(Elwyn et al. 2001; Patel et al. 2003; van Dam et al. 2003; Suarez- Almazor, 2004)。しかし治療の遂行自体は医師の裁量に委ねられる場合が多く、“治療の遂行にまで医師と患者の協業が及ぶような医療”は未だ模索の段階と推測され、文献的にも研究が見当たらない。一方、医師以外の医療職種まで視野に入れると、少なくとも「治療の目標設定」という分野では、患者参加が検討され始めている(Baker et al. 2001)。そこで以下では、理学療法士に関するBakerらの研究(Baker et al. 2001)に着目し、本研究の結果との比較を試みる。Bakerらは、米国の理学療法士が用いる“患者参加に関連した方法”の全体をまず3群(a.参加することへの患者側の準備を助ける、b.患者の気がかりを明確化する、c.患者と共に目標を設定する)に分類し、各群に6から8項目の個別方法を見出していた。上記の3群中では、c群が最も具体的に患者との共同作業の内容を表わしていると判断されたため、それと本研究の知見とを対比させる形で表9に示した。表9より、米国の理学療法士の場合における医療者-患者関係は、基本的には目標に関連した「医療者の言葉による説明/患者の言葉による同意」であり、それが細かく段階を追って行われていることがわかる。“理学療法士の役割”と“患者の役割”とは明確に分離されているようであり、理学療法士が行う診断自体は、理学療法士がひたすら自らの専門知識を動員して行っているように見える。理学療法士の思考過程/診断過程において、患者の言葉が大きな意味を持つにしても、そのことはBakerらの論文中では、特に取り上げられてはいない。一方、本研究の医療者-患者関係では、「医療者側の説明/患者側の同意」と言い切れる程には、理療師と患者の役割が明確に分れていない。視覚が障害された理療師の診療行為自体が、患者の手や言葉を必要とし、患者の手や言葉によって完結している。そこでの患者参加は、「説明と同意」という役割を固定したものよりは、インクルージョンの発想に近い「患者と理療師が共に協力しておこなう作業」、すなわち「患者の手/言葉/判断を理療師の手/言葉/判断と組み合わせた、文字通りの協業」であると結論される。

 4.視覚障害を持つ理療師の理想と現実

 図1には我が国の“あん摩マッサージ指圧・はり・灸師”数(厚生労働省、1972-2000)を、晴眼者/視覚障害者別に整理し、年次推移として示す。1972年当初、両者の数は拮抗していた。しかしそれ以降、視覚が障害された理療師の数は減少傾向にあるのに対し、晴眼の理療師数は増加を続けている。1998年には視覚が障害された理療師に対して晴眼の理療師数は55,842人対179,643人となり、視覚障害者は理療師全体中の少数派になった。インクルージョンの発想(Young, 2000)は、障害を持つものと持たない者が共に理解しあい支えあって生きることであり、理療師という職業が、視覚障害者だけのものでなくなって来たのは、好ましい状況とも言える。しかし、晴眼者の場合の職業選択の可能性に比較して、視覚障害者の場合の可能性が遥かに限定されていることを考えると、この状況が「晴眼者に職を奪われる」方向に推移する可能性も考えられる。そのような晴眼者と視覚障害者との競合は、既に江戸時代においても指摘されていた(加藤、1977b)。視覚情報を持つものの優位性をそのまま認めるような競合が続くのであれば、視覚障害者は自信を失いかねない。視覚障害者の医療への関わりを圧迫するのではなく、視覚障害者が医療に関わることで開けるはずの新たな医療の可能性を積極的に評価することが、今後必要とされよう。

 視覚障害者が関わる新たな医療が、これからの我が国で実際にどのようなものになるのかは、“障害者に係る欠格条項”の廃止後の、今後の状況に負うところが大きい。その際、本研究から明らかになった理療者-患者関係は、一つの出発点になると考えられる。「理療師と患者の双方の手/言葉/判断を組み合わせた協業」という彼らの医療の特徴は、理療師としての著者(井上)の経験に照らしても、本研究開始前には決して周知の事がらではなかった。視覚障害を持つ理療師自身も、そのような特徴を具体的には認識していなかった。この特徴は、本研究の結果得られた新たな発見・知見と言える。視覚障害を持つ理療師自身とその周囲の双方が、障害者が築いて来たこれまでの医療の特徴を再認識することが、今後の展望につながると考えられる。

 では、視覚が障害された理療師自身は、彼らの医療について、どのような理想を抱いているだろうか。注目すべきは、対象者らが抱く理想と現実のギャップである。良質な診療に必要なこととして、「患者との会話時間を多くとる」と全員が回答し、一人当たりの理想とする診療時間について、75%の対象者は60分ないし90分を挙げていた。その一方、実際の診療時間は短めで、20分という場合も認められた。ある対象者は「一人の患者にかけることのできる時間が制限されているため、ゆっくりと問診の時間を取ることができない」と発言していた。彼らが目指す理療を十全な形で行えるかには、職場での雇用条件も関連している。良質な診療に関連して、年配の3名が、「鍼灸師になりきること」と発言したことも注目に値する。これら3名は、自らの職業選択に関し、「視覚障害がきっかけとなり、他の職業の選択の余地が無く就いた職業だ」と前置きした上で、「鍼灸師になりきること」の大切さを述べていた。鍼灸の臨床に従事しながら、より良い鍼灸師になることを目指し続ける言葉と理解された。より良い鍼灸師とは、彼らの言葉によれば「できるだけ患者と会話をする鍼灸師」、「たくさん患者の身体に触れる鍼灸師」、「できるだけ患者の立場に立つ鍼灸師」を意味する。「会話する」、「患者の立場に経つ」は、西洋医学を中心とする現代医療の医師-患者関係にも共通している。しかし「身体に触れる」は、どうだろうか。先端的な技術/知識を重視する一方で、医師が直接に患者の身体に触れることは少ない医療が、いわゆる現代医療の大部分を占めていることは、事実である。本研究の結果、医療者が患者の身体に触れ、患者もそれに協力するような医療者―患者関係の重要さが、改めて問題提起されたと言える。

 5.本研究の限界と特徴

 いわゆる量的・統計的研究の枠組みから見れば、本研究における12という事例数は、明確なエビデンスを出せる標本数とは言い難い。研究の結果得られた種々の特徴も、視覚障害の理療師に関するものであり、晴眼者の理療師を比較対照群とした検討を行っているわけではない。よって、必ずしも全ての特徴について、“晴眼の場合にも共通する理療師一般の状況”と“視覚障害に特化した状況”とを明確に判別できているわけではない。そのような数量的エビデンスを求めるのであれば、将来は晴眼者と視覚障害者の二群を比較する研究も必要とされよう。

 しかし本研究の最大の特徴は、すでに先行研究が存在する分野で確認的なエビデンスを出すことではなく、先行研究が存在しない分野において、視覚障害を持つ鍼灸師が行う医療がどのようなものか、その特徴/概略を知ることであった。この目的を遂行するために、質的なデータ処理を中心とした本事例研究の枠組みは、適切なものであったと考えられる。筆者(井上)は、自らの鍼灸師としての経験を生かした上で、視覚が障害された同僚の行う理療を唯一の事例として、詳細な聞き取りを行うところから、研究を開始した。半構造化した質問方法を用いたため、質問の概略はほぼ一定していたが、質問の細部に関しては、最初の1例から得られた知見を元に、必要であれば手直しを行った。同時に12事例のデータを処理するのではなく、「第一例目で得られた知見を第二例目で確認し、その知見をさらに第三例目で確認する」という具合に調査は進行した。このような事例の連鎖から概略が明確化され、事象の確からしさが浮かび上がって来るのが、事例研究およびそれと関連する質的データ処理の特徴である。本研究で明らかにされた視覚障害者が行う医療の特徴/概略に基づいて、今後は事例的/質的側面からだけでなく、量的側面からも研究が進むことが期待される。

 今回の研究で、方法論的にもう一点考察が必要なのは、「本研究が、対象者の実情にどこまで迫れたか」という得られた情報の質の吟味である。視覚障害者が、晴眼者に比較して日常生活上、また社会的にも不利な立場に置かれて来たことは事実である(山田、2002)。本研究の開始時において、特に注意が払われた研究上の課題は「どのようにして、視覚が障害された理療師から、率直な発言を引き出すか」であった。社会や文化が異なっても、視覚障害者が屈折した心の状態におかれやすいことは共通している。自身が視覚障害者であるFrenchは社会的状況に関連して、視覚が障害された理療師45名に面接調査を行った結果、同様の指摘をしている(Fench,1995)。本研究では最初の質問「S1;視覚障害を持っていることで診療上の不自由さを感じるか」に対し、どの対象者からも「不自由なことはない」と同様の回答を得たが、同時に緊張感や頑なな態度が読み取れた。そこで「強いて言えばどうか」と重ねて質問することから、対象者の本音に近づくことが出来た。さらに対象者の本音に近づくために、調査法自体の参加の水準を上げることが求められよう。

 

Ⅴ 結 論

 本研究では、我が国で障害者が代替的・補[M1]完的に医療に関わることが認められてきた東洋医学系物理療法の分野を取り上げ、事例研究の手法で、彼らが行っている医療の特徴を明らかにすることを試みた。 調査対象は、福岡県に在住の視覚が障害された理療師(あん摩マッサージ指圧師&はり師&きゅう師)12名である。面接聞き取り調査から得られた対象者の発言記録を分析し、理療診療行動つき6分野22主題87項目の特徴を抽出した。結果として、診断から治療に至る場面での様々な課題遂行時に、手指感覚・触覚と言葉が高度に活用されている事実が示された。理療師と患者が出会った直後から開始されるマッサージは、治療技法としてだけではなく触診としても機能していた。マッサージと平行して、医療面接としての対話を行い、同時に腹診や脈診も進める対話的・融合的な診察形態が見出された。対話的・融合的診療の特徴は、診療過程の後半における診断と治療においても明らかで、手指感覚と言葉は相補的に組み合わされ、課題遂行を担っていた。

 

文 献

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Summary 

    Blind people are permitted to take national examination for medical practitioners in the year 2001.  In the near future, blind physicians are expected to take their own role in the main stream of Japanese medical world.  However, the possibilities and qualities of medical care offered by blind care-givers have not been investigated and discussed in Japanese main-stream medical world.  In the present study, the authors focused on physiotherapy, which includes three major therapeutics of acupuncture, moxibustion, and massage, because physiotherapy have been the only medical profession permitted for blind people to practice since the Edo era in Japan.

    Subjects are 12 of blind physiotherapists practicing in Fukuoka prefecture of Japan. Each subject was interviewed at his/her clinic regarding therapeutic behavior and therapist-client relationship.  The first interview for each subject lasted 70 minutes on the average.  All of subjects admitted to tape-recode and/or write down the interview. 

    According to the analytical review by the authors to the recorded texts of the first interview, more than 100 hundred characteristics (statements) were obtained as the initial findings.  In order to obtain statements of all subjects to these characteristics, the second and/or third interviews were performed for some subjects.  As the result, all of subjects’ statements were obtained for 87 characteristics under six categories such as (1)Acceptance of visual disturbance, (2) Therapeutic Style, (3) attitude to patients, (4) Process of diagnosis Status, (5) Treatments and effects, and (6) use of sense other than vision.  All of 12 subjects agreed to 43 characteristics.  Based on these common characteristics and accompanying observations, three of the major characteristics were clarified as common findings; 1) these subjects incorporated verbal communication with patients into their diagnostic and curative practices, 2) massage functioned not only as curative and relaxing practice but also as diagnostic practice of grasping the physical and mental status of patients, and 3) these subjects adopted the sophisticated use of their tactile awareness by sensing status of patients.

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